『乱と灰色の世界』入江亜紀

 

完結してから積んでいた『乱と灰色の世界』全7巻を読み終えた。

明確に言語化できないけど、入江さんの漫画はじっくりとコマに見入ってしまうな。平均的な漫画を読むよりだいぶ時間がかかってしまう。

こういう同じ視点から微細な表情の変化を細かく追いかけるような描写が多いんだけど、これが良い!

もう一つ美点としてモノローグが効果的に使われている点があると思う。たいてい、説明過剰になってうるさく思うことが多いけど、そうならない。

また、対骸虫(むし)戦からナレーション? が入り出すんだけど、これは『群青学舎』のころには使われていなかったんじゃないかな。なんか初めて読んだとき『Hunter×Hunter』の影響とか受けたのかなと思った。

お話は『うる星やつら』みたいな、ガチャガチャ、キャラが動き回るスラップスティックな~みたいに形容されるようなことをやりたかったのかなと思ったんだけど、帯に「エブリデイ・マジック」とあって、知らない言葉だったので調べてみた。

wikiによると

物語の類型のひとつで、日常に不思議が混じる形態の話

とのこと。...定義が広すぎて、あえてこの言葉を付帯する意味がよく分からないね。

ただ、そういった不思議を導入することで日常を異化させて輝かせたいというニュアンスが強かったんだなというのは、最後のあとがきを読んでも、もちろん作品そのものからも感じた。しかし、10歳の少女に背負わせるにはあまりにも重い出来事があって、ほんわか一辺倒ではない厳しさもある。案外、子供と自意識を持つ大人の境目として10歳をきちんと書いたフィクションってあまり思い浮かばないので、貴重な作品だと思う。

本当は、家にある漫画の整理のために、読み終えたら売ってしまおうと思っていたんだけど、コミックスの中に保存していた↑みたいな帯や読者アンケートみてたら惜しくなってきてしまった。入江さんの絵も紙で読みたい感じだしなあ。というわけで、大切に保管しようと思う。