『NEW GAME!』(アニメスタイル010)

 

アマプラで『NEW GAME!』を見た。「dAnime Store for Prime Video」というチャンネルに追加で加入しなければいけないのだけど、二か月間は月額99円で、その後も月500円とまぁ、許容範囲。

主人公の青葉ちゃんは、ゲーム会社にデザイナー志望で入社して、そこで3Dのモデリングやキャラデザなんかをやっていくのだけど、そこらへんの仕事の描写がとても丁寧で思わず1話1話実況しながら見入ってしまった。

入社初日からいきなりテキスト渡されて読み進めるように言いつけられて放置...されるところなんか、自分もシステム開発会社に入社したての頃を思い出してしまった。最初は、この自学するということがとてもハードル高かったんだよなぁ...。そして、その後実務に入る際には、座学で学んだこととの落差に打ち砕かれるのでした。青葉ちゃんはそこらへん非常にスムーズに適応しているように見えて感心してしまった。正直、ちょっとくらい躓いてほしいと思えるほどに。入社1週間で、テキストある程度進めたら、もうモデリングって出来ちゃうもんなんでしょうか? 識者に聞いてみたい。

青葉ちゃんがもう理想の新入社員という感じで見ていて眩しい。

分からなかったら、手間を惜しまずに先輩にちゃんと聞くし、コミュニケーションをおろそかにしない青葉ちゃんは偉いな...。

個人的には7話から登場するプログラム部のうみこさんがお気に入りです。その回の、うみこさん周りの作画も気合入っててよかった。

久々にこんな萌え萌えしたキャラ演技のアニメをみたように思う。「ふえぇぇ」みたいな発声するアニメ最近なくないか? とくにねねっちのリアクションは本当に過剰。 『NEW GAME!』は骨組みがお仕事物としてちゃんとしてるんで、逆にそういうアニメ特有の表現(きららっぽさ?)みたいなのがすごい強調されて感じた。

こういう「くぎゅー」とか「むふー」みたいな、止め画で発音される声にならない声みたいなのが、アニメの虚構性に大いに寄与してるんだなということを、今更に思った。そして、そういうアニメならでは虚構性があるからこそ、良い人だらけの会社なんかに違和感が出てきそうなものだけど、それを封じることができるんだよね。こういうアニメの虚構性があってこそ、ブラック企業と謗られてもしょうがないような労働が輝いて見える、というマジックがある。というわけで、とても堪能しました。

 

アニメスタイル010』

アニメスタイル010で特集もされていたので、興味深い個所を抜粋してみた。

 

p102

藤原 〔……〕前作の『プラスティック・メモリーズ』では、広角レンズで地面を見せるようなレイアウトを作って緊張感を出す事を意識していたんですけど、今回は準望遠レンズとか望遠気味のレンズを使って地面をなるべく見せずに、パースとかそこら辺も難しい事を考えずに安定した画面で作っていこうと。その代わりキャラクター達のリアクション等を多めにして、アニメーターの方々にもキャラクターを動かす事に専念してもらえば、キャラクターがより生き生きとしていくんじゃないのかなあと意識して作っていました。

藤原 〔……〕手前にナメを入れているカットで、実際には撮れない構図だと、奥だけは望遠レンズで、手前だけは広角レンズでちょっと大きめに撮ったりとか。そういうふうに3Dレイアウトを使いつつ、手前にいるキャラクターは3Dレイアウトの収まりではなく、コンテの収まりで作画するように調整する。

ナメとは、手前の人物越しに覗き込むような特殊なカメラ目線のこと。

小黒 コンテに合わせてキャラクターをなおすというのは、フレーム内の大きさだけの問題なんですか。

藤原 〔……〕目や眉毛あるいは口だけで、感情を表現しないでほしいという事なんです。椅子に座って一所懸命に作業をしているカットだったら、肩が入って前傾姿勢になったりすると思うんです。〔……〕作画ではそのカットに必要な芝居をさせて、さらに画面の収まりをよくしてほしい。キャラクターは3Dレイアウトに合わせるのではなくて、コンテに合わせてほしいという事です。

 

p103

藤原 〔……〕日常芝居を極端に抜いていったと思っていたんですけど(笑)。どうなんですかね?

小黒 いや、リアクションが多めだったと思いますよ。

藤原 今回は感情が入れられる芝居は頑張ろう。その代わり、立ったり歩いたりするような日常芝居はやめようという考えでした。例えばキャラクターが名前を呼ばれて、返事をして立ち上がって振り向くという芝居をやるだけでも、凄くカロリーがかかってしまうんです。

こういう日常芝居を省略する演出方針というのは今まで聞いたことがなかったので新鮮だった。なるほどねー。日常芝居とリアクションが対になっているとは言わないまでも、補完しあえるわけか。

 

p108

小黒 11話はBパートの頭で、マスターアップ前にみんなが働いているところで雨が降ってくるのがよかったですよ。

藤原 あ、よかったですか! それは嬉しいです。勿論天候がそのキャラクター達の心情を表しているという演出方法があるのは凄く分かるんですけど、それをやりすぎると演出が立ちすぎちゃう、鼻につくんじゃないのか。そういう事の匙加減が難しいんですよね。原口(浩)さんがコンテ・演出で、その辺を鼻につかないようにやってくれました。雨を降らせるところも晴れさせるところも、キャラクターの感情がピークになるところに重ねていないのが、凄く上手いなとおもいました。

こういう定番の演出を微妙にずらしてみせるようなニュアンスは観ていて全くくみ取れていないなと少し反省するところ。こういうところに引っかかれるように、インタビューや批評を読むのだ!

 

p109~p110

藤原 〔……〕特に今回の作品はキャラクターのアップが多い事で、アングルが限られてしまう。それでちょっとメリハリを効かせるために、色んなハッタリの画面を入れていきました。俯瞰やアオリのような、あまり観たことがないようなレイアウトを入れて、観ている人が画面に対してちょっと違和感を持てば、映像に気持ちが向くのではないかと。〔……〕あと、斜めレイアウトを画として綺麗に見せるには、女性の曲線美を活かすことが有効だったという事情もあります(笑)。

小黒 斜めレイアウトって、カメラを倒して撮ったようなカットのことですか。

 

p110

藤原 〔……〕それから、観ている人が飽きないように、コンテを描く人には、5分に1回ぐらいの間隔で、10秒間で5カットを積むようなところを作ってほしいとお願いしました。

〔……〕

藤原 〔……〕あと作画カロリー的に1カットだけ200枚以上のカットを作ってほしいとか。

基本的に画で見せるなかでの動きへの創意工夫が興味深い。こういう積み重ねが見てて飽きないアニメになるんだな。