アニメスタイル017

 

もう少し理論的に、解像度高くアニメを鑑賞できるようになりたいなと常々思っていたので、作画マニアや濃いアニメファンから評判高いというアニメスタイルを手に取ってみた。

特集されているアニメの中では「モブサイコ100 Ⅲ」「ヤマノススメ Next Summit」についての記事は未視聴なので未読。

以下、気になった個所をピックアップ。

 

「王様ランキング」

p6

小黒 ちょっと脇道に逸れますけど、背景は全部手描きなんでしょうか?

八田 最初の段階では美術の青写真さんからは、全部手描きで使いまわしもせず、各場面を新作で作りたいという希望をいただいていました。おそらくスケジュールの問題で、デジタル背景や兼用も出てきているとは思います。

p10

八田 ~今回はあまり撮影処理を入れないようにという方針だったんですが、のべっとした感じの画面になっちゃうのはよくないので、線の処理等を色々工夫していただいて、ああいう画面が出来上がった感じですね。あの線処理と美術とのマッチングが、今回の画面処理の芯になったと思っています。

(ここでいわれているあの線処理というのは、おそらく後述される撮影で線を加工していることを指している?)

p15

付ける影を極端に少なくし、そのかわりに身体の縁にハイライトを付けて立体感を表現する作画スタイルは、作品に格調高さを与えている。

↑これが正直、この文章読んでからアニメを見返してみてもよくわからなかったところ。ハイライトとは、「光源からの光が物体の表面で反射され、明るく光る部分」とあるが、これがイマイチ見ててわからない...。

p22

小黒 作画監督が大勢クレジットされている回がありますが、あれはスケジュールの問題なんですか。

岡田 そうなんですよ。作監のクレジットが多いのは「原画の方がそのまま作監もやています」という意味合いで載せている事が多いですね。

p22~23

岡田 ~そういう理由で原画の方にご自身のカットの作監もお願いしたりすると、作監のクレジットが増えることになります。

野崎 確かに終盤で描き慣れてくると、皆さんが直作監になっていましたね。

小黒 直作監というのは、自分でレイアウトと一原を描いて、演出修と総作監修が入った後に、それを元にして原画を完成させるという事ですね。

↑こちらは、「レイアウト」「一原」「演出修」「総作監修」の作業範囲とか量感がわからないので、イマイチ想像できない。

p23

野崎 それと撮影も凄くよかったですよね。あの線の感じは、撮影で出しているんですよ。

小黒 動画の線は強弱がなくて、撮影で線を加工してアナログ感を出しているという事ですね。

野崎 そうなんです。顔の輪郭戦は太いんですけど、顔の中の線は細いんですよね。人工知能でやっているそうですが、たまに表情で皴が付くと線が密集してしまうので、そこだけ太くなったりします。

 

「Do It Yourself!!」

p72

小黒 シリーズの話に戻りますが、影無し作画が基本だったじゃないですか。これは、影無しでも画を持たせることができるという自信があったんでしょうか。

松尾 「画面のクオリティが低い」と言われるだろうな、という覚悟はしつつ、「こういう見せ方もあると思うんですが、いかがですか」という気持ちで、1話の影無しは意図的にやってましたね。

小黒 明暗があるときは影を付けるという考え方なんですよね。

松尾 夕日等、光源がはっきりしているシーンでは、適宜好みでやってもらって構わないという感じですね。

小黒 でも、昔の細田作品のような影無し作画は、コアなアニメファン的にはストイックなわけじゃないですか。

松尾 落差を付けたくて、普段は影無しのわりと緩めなところに、見せ場で影を付けたら活きるんじゃないかな、と考えていました。

小黒 影無しという事は、レイアウトをしっかりとて動かさないと画が成立しないわけで、これは表裏一体ですよね。

松尾 そうですね。影無しで画が崩れていると、影の補強がないから、崩れが余計に目立つという事はありますね。

 

サイバーパンクエッジランナーズ

p102

今石 ~でも、サイバーパンクというジャンル自体もネオンカラーの彩度の高い発色のいい色を入れるのが最近のスタイルにもなっているし、実写映画らしい空間に見せるためにもリムライトを使いました。フチに1色入れて立体感をどうやって出していくか、という事なので『プロメア』よりは実写寄りの考え方かもしれないですね。

~影の付け方は、やっぱりアニメーターがコントロールしなきゃいけない。色のチョイスよりも、面積やかたちでコントロールするところが大きかったから、作画の負担も重かったんですよね。

今石 そうなんですよね。いつもなら光源側からハイライト、ノーマル、1号影、の順に明暗を付けるけど、それは光源が1つの場合の描き方なんです。リムライトというのは、陰になる部分に反対側から逆光のライトを当てて立体感を出すという考え方のものなんです。

吉成 要するに光源が2つあるって事なんです。だから、同一方向から光が来ちゃいけないという事が原則になっていて。最近多いよね。

↑ここまで緻密に画面がコントロールされていることに驚く。ここら辺の演出意図を鑑賞時にきちんとつかめるようになりたい。

p110

今石 『AKIRA』とか『攻殻機動隊GHOST IN THE SHELL)』とか『カウボーイビバップ』みたいなものを作ってほしいわけですよ。

小黒 ああ、クールなやつを。

今石 そう。そんなの当時のスタッフ全員呼んできたって、今は作れないから。

小黒 そうだね。押井(守)さんが監督になったとしても、同じものは作れないだろうね。

今石 あの当時の小倉工房みたいな背景がいいと言われても、今のデジタルでは難しいし、筆で描ける人もなかなかいない。