『ヤマノススメ』(アニメスタイル004)

 

1クール、毎回5分のアニメとして放映されていたらしい。今ちょっと記憶を探ってもそういう形式のアニメはほかに思いつかない。
作画アニメという前評判だったのだけど、短い時間の中で常に動きっぱなしというわけではなく、女の子がアウトドアを楽しむ似たいようなアニメである『ゆるキャン△』同様にロケーションを楽しむという趣向が強い。もともと一話5分で全12話しかないので、あっという間に見終えた。(テレビ未放送でアマプラにはないBlue-ray収録の13話目があるらしいがそちらは未視聴)

 

アニメスタイル004』にて特集もくまれていたので、気になる箇所を抜粋してみた。

p133

小黒 画作りのコンセプトについては、どのように考えていらしたんですか。

山本 やっぱり、風景を見せるという事ですね。キャラを売りにした作品なんだけれども、通常よりもちょっとアップを減らすようにしました。それから、カメラワークも減らして、なるべく1枚画のFIXで見せる。同じ3秒のカットでもカメラワークが入ると、忙しい感じになってしまうんですよ。短いカットでも、みんなが「観た」という気になれるように、カメラワークを整理しようと考えました。

これこそリミテッドアニメーションとしての表現を追求するような考え方で興味深かった。

 

p141

小黒 6話から1人原画の話数が連続するじゃないですか。どういうプランでああなったんですか。

山本 昔は4、5人くらいで、TVアニメの1話分を描いていたじゃないですか。だけど、今では原画マンの数が10人、20人は当たり前になっている。そういった状況を批判するとかではないんですけど、今回は1話が50カットしかないんだし、ちゃんとコンテさえ上がっていれば、スケジュール的には1人で描けるはずなんです。それで「なるべく1人に描いてもらおうよ」と制作お願いしました。

自分には個別の回ごとの原画の個性まで掬い取れなかったけど、ここが作画アニメと言われるゆえんなのかな。

 

p141

山本 写真を加工して、そのままBGにするみたいな。それだけはしたくないと、美術監督の松本浩樹さんが主張してらっしゃって。だから、いわゆるう写真レイアウトも使っていないんですよ。

〔……〕

山本 最後の最後に時間がなくなって、なぜか写真を加工をして原図にしましたけど、基本的には全部手書き原図です。

小黒 ロケハンで写真をたくさん撮られているんですよね。レイアウトは写真を見ながら描いたんですか。

山本 そうです。中には、写真をなぞっているのもあるかもしれないけれど。

松尾 写真なぞりも、ほぼないですね。基本、写真を見てディティールの参考にする感じでした。

山本 やっぱりそのほうがいいですよね。写真にはいらない情報も山ほどあるから、写真を参考にして手で描くことで、必要な情報だけでまとめることができる。

以前、『聲の形』の山田監督へのインタビュー中で、インタビュアーの小黒さんが言っていた「美しいことに(映像が)演出的な意味がある」という考え方とはまた別に、必要な情報だけでまとめることの利点について考えさせられる。正直、そこをもう少し深堀してほして聞きたいんだけど、推測するにリソース的な観点と、上述のカメラワークの話でも出てきた「観た」という感触を強めるためなのかな。

 

さて、というわけで引き続き、この後のシリーズも見ていこうと思います。