『響け!ユーフォニアム』(アニメスタイル007)

 

久々に『響け!ユーフォニアム』を見返した。新劇場版(特別編? 上映時間が50分ほど)の『響け!ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜』がきっかけだけど、まだ観られていない...。

これをテレビ放映と合わせてシリーズを追うことが出来たのは今でもよかったと思う。映像の美しさに圧倒されたのはよく覚えている。今でこそアニメの「撮影」という工程とその効果に多少は意識が向くようになってきたけど、そういった関心を持つようになったのもこの作品がきっかけだと思う。被写体深度の絶妙なコントロールに惹かれたんだ。

昔は全く引っかからなかったけど、サファイア川島と葉月ちゃんの役回りがやけに良い味出してるの気づいた。「サファイア川島!」「緑です~」の定番のやり取りが好き。

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EDでもやけにトリッキーな走り方してるのに気が付いた(笑

そして、エピソード11がやはり傑作。感極まって泣いてしまった。この回は特に入り組んだ心理描写が素晴らしい。それでいて説明臭さは皆無。香織先輩には幸せになってほしい。夏紀先輩が素晴らしいのなんて言わずもがなで、その夏紀先輩が活躍するBlue-rayに収蔵されている「かけだすモナカ」なんか、番外編扱いなのがもったいない。「なんだか、お前がいとおしくなった」というセリフの破壊力よ!

 

アニメスタイル007」でも特集されており、これはそれこそ放送終わったあたりからずっと持ってた。今回改めて、『響け!ユーフォニアム』の特集記事読むと、この素晴らしい画面を作るための創意工夫というのがすーっと頭に入ってきた。これを語りたくていろいろと語彙を貯めていたんだなと自分で納得した。

p24

小黒 『響け!ユーフォニアム』は特殊な画作りをしていましたよね。「レンズを意識した画面づくり」を基本にしていて、さらに言うと「被写界深度の浅い世界」になっていた。レンズについては、おそらく最新のいいカメラではなくて、ちょっと昔のカメラで撮ったような、味わい深いカットがもの凄く多い。

〔……〕

石黒 〔……〕なのでむしろ、人間が見ているそのままの印象とか、記憶にある景色とか、そういうものに即した画面にしたい。それを実現しようとすると、画面の周囲がボケたりとか、古いレンズで撮ったような画面になる。そっちの方がリアルだと思うんですよね。

一般に「被写界深度が浅い」とは、ピントが合っている範囲が狭いことをいうとのこと。

 

p29

小黒 手ブレだけでなくて、ほかにもレンズにゴミが付いていたりするのも含めてなんですが、「これはカメラマンが撮っている映像ですよ」という事を明らかにする表現でもありますよね。つまり、「視聴者がアニメの世界に入り込む」のではなく「アニメの世界の中にカメラマンがいて撮影している」という事になる。すると、客観視が強まってしまって感情移入がしづらくなる危険性を孕んでいませんか?

この指摘は面白かった。というのも自分は全くそんなことを見ていて思わなかったから。同時に、自分はキャラクターに感情移入しながら見るという事をほとんどしないなという事に気づいた。

 

p39

小黒 カメラのボケの話に戻りますが、例えば、手前と奥にキャラがいて会話をしていて、最初は手前のキャラにピンが合っていて、奥のキャラが喋るとピンがまた手前に合う、みたいなカットがあるじゃないですか。そういったピン送りががシリーズ通して多かった気がしました。〔……〕

〔……〕

石原 〔……〕最近うちの作品はコンテのカット数が多くなる傾向にあるんですよ。演出家にフィックスが好きな人が多いので、PANを使って複数のキャラを見せればいいところを、カットを割って全部フィックスの画で見せちゃったりする。そうしないために、奥と手前にキャラを配置してピン送りを使う事で1カットで収める事ができるんです。

小黒 ピン送りを使う事で、1カットで2カット分の表現ができるという事ですね。

石原 〔……〕だから、そういう事ができるようにカメラの位置を持っていくしかないですよね。2人のキャラをピン送りでそれぞれ注目させたい時は、2人が奥と手前に収まるように撮らなきゃいけないわけです。

山田 そして、そういうアングルがちゃんと意味を持つようにする、という感じです。

ここは、勉強になった。カットを割りたくないというところから、カメラの位置を決めることもあると。

 

p40

小黒 そういえば、楽器作監の高橋(博行)さんは、やはり楽器にお詳しい方なんですよね?

石原 〔……〕どっちかと言うとメカっぽいものを描くのが得意な人です。楽器の複雑なパイプの取り回しとか、構造を三次元的に頭の中でイメージできるんですよね。

このあと、楽器は3Dではなく作画で行っているということ、その利点の話が続く。

山田 〔……〕あと、今回は高橋さんが楽器周りをやってくださるという事もあって、是非作画でいきたいなと。

小黒 楽器への映り込みも作画しているんですよね?

石原 キャラの影が映りこんでたり、光の加減が変わったりしていると思いますけど、キャラがはっきりと映り込んでるところはなかったんじゃないですか?

小黒 キャラはないですね。漠然として映り込みっぽいハイライトが描いてありましたが。

山田 それも高橋さんのかっこいいところですね。「どういう脳内構造だったらこんなん描けるんですか?」ってよく聞きます。

小黒 じゃあ楽器については、高橋さんの手がかなり入っている?

山田 ほとんど全部と言ってもよいかと。

小黒 全部!?

この話はほんと驚いた。こういう異能の人がたくさんいて傑作が出来上がっていたんだなと感心しきり。ただ高橋博行さんは京アニの放火事件で犠牲になってしまったという事で、非常に残念。お名前を認識もしていなかったけど、これを機にきちんと覚えておきたいと思った。

 

p41

小黒 『ユーフォニアム』で嬉しかったのは、作られている方々が表現の力というものを信じているという事なんです。

〔……〕

小黒 〔……〕普通だったら、例えば客席にカメラを振って観客が感動している様子を映したりとかするじゃないですか。そこを、演奏だけを見せる事であれだけ緊張感と盛り上がりのあるシークエンスに仕上げている。あれは、表現の力を信じていたからこそできた事なんじゃないかと。

全力で同意したい箇所。そう、だから『響け!ユーフォニアム』は素晴らしいんだ。

 

p50

小黒 まずシナリオを書きあげて、それを見て監督が意見を言うんですね。

花田 『ユーフォニアム』に限らず、石原さんと山田さんとお仕事させていただいた時はそういった流れがほとんどかなあ。

小黒 監督が「こんな場面がやりたい」と言って、画を描いて持ってきたりはしないんですね。

花田 そうなんですよ。普通だと最初にそういったものがあったりするんですけど、それがほぼないんですね。〔……〕

小黒 つまり、石原監督も山田さんも「演出家脳」なんですね。自分がやりたいことを形にしていくという作家タイプではなくて、あがってきた素材を元にどうやって組み立てるかを考える演出家タイプ。

絵コンテの前段階である脚本のでき方として面白かった。正直、京アニ作品の原作をよむとガックリ来ることが多く、これならオリジナルでなんか作ったほうが良いのでは見たいに思う事は多々ある。でも、単純な話ではないみたいね。こういった映像畑の人の演出力の前に、素材にしかならないような原作の作者は何を思うのか....。

 

p54

花田 〔……〕12話はほとんどシナリオ通りなんですが、独自の要因が入っていて、印象は違っていたのを覚えていますね。セリフについても、最後の滝先生の「あなたの『できます』という言葉を私は忘れていませんよ」というセリフは、演出の三好(一郎)さんが書いているんですよね。

これも驚き。確かにこの一言でグッと印象に残る話になったどころか、シリーズ全体の質も上げてるようなセリフだと思う。

 

さてというわけで、最近忙しくなってきたので、ちょっと先になるとは思うけど、二期や間の劇場版も改めて鑑賞したいところ。そして、最新の劇場版を劇場で見ることが出来るのだろうか!?